M&Aをわかりやすく解説
M&Aとは?~IT事業 M&Aの基本をわかりやすく解説します!~
M&Aとは
M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。M&Aの意味は、企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。M&Aのスキームには非常に多くの手法があり、それぞれの手法を、企業の経営戦略や対象企業の状況に応じて選ぶことが肝要です。
M&Aの目的
M&Aと聞くと、以前は外資系企業(ハゲタカ)が会社を乗っ取るイメージもありましたが、近年は企業の成長戦略の手段としての意味合いが強くなってきています。弊社の売り手様からも自分の会社が売れるかどうかわからない、という不安をいただくことがありますが、これまで培ってきたノウハウや営業ルートなどの見えない財産(のれん)や雇っている従業員様(有形資産)、知的財産などに魅力を感じる買い手様も多くいらっしゃいます。IT領域の売り手様・買い手様のM&Aの目的についてご説明いたします。
売り手の目的
資金調達と資本効率の向上
企業の成長や新たな投資を実現するためには、資金が必要です。売却を通じて資金調達を行うことで、企業の資本効率を向上させることができます。売却によって得られる資金を、新規事業展開や研究開発、マーケティング活動などに活用することで、企業の成長を促進できます。
事業の再編と集中化
売却は、事業の再編や集中化を実現する手段としても活用されます。時には、特定の事業部門や非戦略的な資産を売却することで、企業のポートフォリオを整理し、事業の選択と集中を行うことがあります。売却を通じて事業を再構築し、より競争力のある組織を形成することが可能です。
技術や知識の保護と継承
IT企業がM&Aを検討する場合、売却側の目的の一つは、自社の技術や知識を保護し継承することです。買収企業が自社の技術や知識を活かし、それを発展させることで、新たな成果や価値を生み出す可能性があります。売却側は、自社の技術や知識が有効に活用され、さらなる成長や革新が促進されることを期待することがあります。
経営資源やネットワークの活用
M&Aによる売却は、経営資源やネットワークの活用を目的とすることもあります。売却先企業が持つ豊富なリソースや広範なネットワークにアクセスすることで、売却側は新たなビジネス機会や成長の可能性を開拓できます。売却先企業の市場知識や営業力、グローバルな拠点などを活用することで、売却側の事業拡大や国際展開が実現することもあります。
企業価値の最大化
売却側の目的の中には、企業価値の最大化を追求することもあります。時には、市場の評価や競争状況の変化などにより、売却による企業価値の向上が望まれる場合があります。売却を通じて、企業の株主価値や株式の評価を最大化し、株主に対するリターンを追求することが目的となることもあります。
買い手の目的
成長戦略の実現
IT企業がM&Aを通じて買収を行う主な目的の一つは、成長戦略の実現です。買収を通じて市場シェアの拡大や新たな事業領域への進出を図り、企業の収益性や成長率を向上させることが目指されます。買収先企業の技術や製品、顧客基盤などを活用し、自社の競争力を強化することで市場での地位を向上させることが期待されます。
技術・知識の獲得
急速な発展を続ける IT 領域では革新的な技術と最新の知識の獲得が重要視されています。買収を通じて、譲渡企業が保有する優れた技術や知識を取り入れることで、自社の技術力を強化することが可能です。新たな技術や専門知識の取得により、製品・サービスの拡充や開発能力の向上、イノベーションの推進などが期待されます。
拡大戦略と市場進出
買収は新たな市場への進出や地理的な拡大戦略を実現する手段としても利用されます。買収先企業が持つ市場へのアクセスや顧客基盤、販売チャネルなどを活用し、自社の事業領域や地域を拡大することが可能です。市場進出やグローバル展開を通じて、競合他社との差別化や新たなビジネスチャンスの創出を目指すことがあります。
競争力の強化と市場リーダーシップの確立
競争力の強化と市場リーダーシップの確立を目的として買収をすることもあります。譲渡企業が持つ優れた技術や製品、ブランド価値を取り入れることで、自社の競争力を向上させることが期待されます。市場でのリーダーシップを確立し、競合他社よりも優位な立場を築くことで、市場シェアの拡大や収益の増加を実現します。
M&Aの主な手法
M&Aのスキームには非常に多くの手法があり、M&Aの広義の意味として企業の合併・買収だけでなく、提携までを含める場合もあります。一般的にM&Aというと買収の意味合いが強く、その中でもよく行われる株式譲渡と事業譲渡についてご説明いたします。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手から株式を買収することで対象企業の経営権を獲得するスキームです。M&Aの契約締結に伴い株式を獲得し、対価として現金を支払うことで株式譲渡は完了します。あくまで株主(≒経営者)のみが変わるだけで、それ以外(権利や義務の関係など)に変化は生じないのが特徴です。
事業譲渡
事業譲渡とは一定の目的のために組織化された有機的に機能する財産(事業)の一部または全てを、他の会社に譲渡するスキームです。特徴的なのは、契約によって譲渡の対象となる事業を選択することができ、譲渡対象資産を比較的自由に選別可能な点です。
スキーム別の選択理由
株式譲渡・事業譲渡を選択される主な理由です。
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株式譲渡
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事業譲渡
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売り手
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引継ぎをスムーズに行いたい
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完全リタイアしたい
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借入金、個人保証を引き継いでほしい
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会社の商号・屋号を残してほしい
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所得税の税務メリットを享受したい
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譲渡対象事業以外の事業は継続する予定
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ノンコア事業の売却代金で、コア事業に投資したい
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譲渡後も資産管理会社がほしい
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繰越欠損金を使って税負担をゼロにしたい
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重厚なDDに耐えられない
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買い手
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知的財産をスムーズ引き継ぎしたい
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従業員への影響を最小限に抑えたい
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不動産の登録免許税を回避したい
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薄外債務の見積もりが困難で株式譲渡のリスクが取れない
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のれん・固定資産の償却による節税効果を享受したい
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M&Aスキームの種類によってメリットやデメリット、必要な手続き、税務などは異なります。スキームごとの違いを知らないと、目標の達成が困難となったり、思わぬ損失を被ったりするリスクがあります。
上記のリスクを少しでも軽減するためにも、それぞれの違いをしっかり踏まえた上でM&Aスキームを選ぶようにしましょう。
M&Aの流れ
M&Aには、仲介を利用する方法と、売り手と買い手のそれぞれが別のFA(ファイナンシャルアドバイザー)を利用する方法、譲渡・譲受企業が直接やり取りをする相対の3つがあります。
ここでは中小企業のM&Aの大部分が該当する仲介を利用して実施する場合の流れを説明します。
※おおまかな流れは相対でも同様に進みますが、間を取り持ち進めていく仲介がいない場合は、交渉上のパワーバランスが弱い側が一方的に損をするケースや、ディールの最終段階で条件を大きく変えられてしまうケースなども多く、注意が必要です。
上記の期間は目安です。最短でStep08の契約の締結までを1か月で行うケースもございます。
M&Aにかかる費用
M&Aには、買収対象企業の株式や資産を取得するための資金調達や、買収交渉や契約締結に関わる専門家の報酬などが含まれます。
M&Aにかかる費用を分類すると、以下のようなものがあります。
売り手にかかる費用
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弁護士への報酬
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契約書や計画書の印紙代
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M&A仲介手数料
買い手にかかる費用
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運転資金(事業譲渡の場合)
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敷金など(事業譲渡の場合)
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弁護士への報酬 買収監査(DD)の費用
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契約書や計画書の印紙代
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登記にかかる費用
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M&A仲介手数料
M&Aにかかる費用は、企業の成長戦略として重要な役割を果たすM&Aを成功させるために必要不可欠なものですが、同時に企業の利益やキャッシュフローに影響を与えるものでもあります。そのため、M&Aを行う際には、事前にM&Aにかかる費用の見積もりや予算管理を行うことが重要です。また、M&A後には、実際に発生した費用と見積もりとの差異分析や効果測定を行うことで、次回のM&A活動の改善点を見つけることができます。
M&A仲介手数料とは?
この仲介手数料が良くわからない、というお話を聞きますので、すこし詳しく記載させていただきます。
一般的にM&A仲介費用にはいくつかあります。
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着手金
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中間報酬
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月額報酬
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成功報酬
またこれ以外にも最低報酬額というものが設定されている企業が多く、算定した報酬が最低報酬額よりも低い
場合は最低報酬額を支払う、というスキームになっています。
ただし、業界で決まった規定はないため、中小企業向けのM&A仲介会社では着手金、中間報酬、月額報酬をとらない、または一部のみという企業もあります。
成功報酬はどのように算出される?
多くのM&A会社が採用する報酬体系がレーマン方式とよばれる算出方法です。このレーマン方式は日本だけでなく、アメリカ・イギリスなど世界中で使われる算出方法になります。
レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法です。さらに仲介会社によっては、最低報酬額を設定している場合があります。最低報酬金額は500万円~2,500万円にて設定されていることが多いです。レーマン方式がどのようになっているかは仲介会社によって異なるため、契約する際は何に対して成功報酬料率を定めているのか、しっかりと確認することが重要です。
弊社のレートは以下のようになっています。
| 取引対価 | 料率 |
|---|---|
| 0円超~2,000万円以下の部分 | 10% |
| 2,000万円超~4,000万円以下の部分 | 9% |
| 4,000万円超~6,000万円以下の部分 | 8% |
| 6,000万円超~8,000万円以下の部分 | 7% |
| 8,000万円超~1億円以下の部分 | 6% |
| 1億円超~5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超 | 1% |
このレートの金額以外に仲介会社によっては500万円~2,500万円にて最低報酬額が設定されているケースが多いので、仲介会社様への確認が必要になります。
弊社は譲渡企業様への最低報酬額の設定をしておりません。成約基本料100万円と上記の取引対価に応じた手数料のみのお支払いとなります。詳しい料金設定はこちらから
レーマン方式の具体例
買収価格が1,000万円の場合
1,000万x10% = 100万円(税抜)
※ただし最低報酬額500万円が設定されている場合、この金額は最低報酬額を下回っているため、手数料は100万円ではなく500万円になります。
買収価格が6,000万円の場合
2,000万円×10%(2,000万円以下の部分) = 200万
2,000万円×9%(2,000万円を超え4,000万円以下の部分) = 180万
2,000万円×8%(4,000万円を超え6,000万円以下の部分) = 160万
合計:540万円(税抜)
※ただし最低報酬額1,000万円が設定されている場合、この金額は最低報酬額を下回っているため、手数料は540万円ではなく1,000万円になります。最低報酬額が500万円の場合は超えているので540万円です。
IT領域のM&A
IT業界のM&A動向
急速に拡大を続けるIT業界ではM&Aが非常に活発に行われています。
IT業界では慢性的なエンジニア不足が続いており、規模拡大・事業成長のためにM&Aを選択する企業が増えています。優秀なエンジニアの採用や育成は難度が高く、時間もかかるため、M&Aによって同じ会社に所属し、同じ文化で業務を行ってきたエンジニアのチームを一度に確保できることは大きなメリットがあります。あわせてあらゆる業種の企業がDX・IT化を推進すべくリアルビジネスを運営する企業がIT企業をM&Aで譲り受けるケースも増加しています。
M&AでIT企業を譲り受けたいというニーズが増えていることから、IT企業は売り手市場となっており事業成長の選択肢としてM&Aを検討する企業も増えてきています。
IT領域を大きく5つの業界に分け、各業界の事業内容とM&A事例を解説いたします。
1.インターネットWeb業界
インターネットWeb業界は、ウェブサイトやアプリケーションの開発、オンライン広告、デジタルコンテンツの配信など、インターネット上でのビジネス活動に関連するサービスを提供しています。
代表的な企業:Google・Yahoo!・楽天・Amazon・DMM・Twitter・Facebook(Instagram)
—インターネットWeb業界のM&A事例—
-2019年1月、株式会社SHIFTが株式会社さうなしの全株式を取得し、子会社化しました。ソフトウェアのテスト事業や品質保証を手掛けるSHIFTは、Webサイトの企画・製作を手掛けるさうなしを子会社化することで、ソフトウェア製品の機能面だけではなく使いやすさ、活用性における観点からの品質の向上を目指すとしています。
2.ソフトウェア業界
ソフトウェア業界は、ソフトウェアの開発、販売、ライセンス供与などを行っています。これには、オペレーティングシステム、アプリケーションソフトウェア、データベース管理システムなどが含まれます。クラウド化やDXの拡大により近年はさらにニーズが高まっています。
代表的な企業:日本オラクル・Microsoft・サイボウズ・トレンドマイクロ・オービック・Adobeシステムズ・東芝テック
—ソフトウェア業界のM&A事例—
-2021年5月、株式会社PKSHA Technologyは株式会社アシリレラの全株式を取得し子会社化することを決めました。PKSHA Technologyはソフトウェアや各種ハードウェア端末向けに自社開発の機械学習・深層学習アルゴリズムを活用したソリューションを提供しており、豊富なユーザー基盤を持つソフトウェア開発企業のアシリレラを買収することで自社開発アルゴリズムとの融合・連携により大きなシナジーが得られると想定しています。
3.ハードウェア業界
ハードウェア業界は、コンピュータやスマートフォン、サーバー、ネットワーク機器などのハードウェア製品の開発、製造、販売を行っています。いまや製品の提供だけでは生き残りが難しく、製品を使うことによって付加価値をどれだけ生み出せるのかが求められます。
代表的な企業:日立・SONY・Panasonic・IBM・Apple・日本HP・NEC
—ハードウェア業界のM&A事例—
-2021年12月、ミナトHDはエクスプローラの全株式を取得し、子会社化しました。ミナトHDおよびグループは、電子部品・機器、デジタル会議システム、ITシステム開発などの多様な事業を展開しており、ソフトウェア設計、ハードウェア設計・製造等を行うエクスプローラを子会社化することでソフトウェア開発の強化だけでなくインテリジェント・ステレオカメラ事業等の画像関連事業でのシナジー創出が想定されるとしています。
4.情報処理サービス業界
情報処理サービス業界は、データセンターの運営、クラウドコンピューティング、ソフトウェア開発・保守、ITコンサルティングなど、企業や個人の情報処理ニーズに対応するさまざまなサービスを提供しています。情報処理サービス業界は、SI(システムインテグレーション)業界とも呼ばれ、SI事業を展開する企業はSIer(エスアイヤー)と称されます。
代表的な企業:富士通・トランスコスモス・野村総研・日本総研・東芝デジタルソリューションズ・伊藤忠テクノソリューションズ
—情報処理サービス業界のM&A事例—
-2021年4月、株式会社アクシスは株式会社ヒューマンソフトの全株式を取得し、子会社化しました。アクシスは各種システムの開発・販売等各種コンピュータ関連事業を行っています。ソフトウェア開発事業、SES事業等を行うヒューマンソフトを買収することで経営基盤の強化と合理化、開発人員の増強や取引先拡大により、利益率の向上と事業のさらなる成長発展・グループ全体としての事業拡大を目指すとしています。
5.通信インフラ業界
通信インフラ業界は、通信ネットワークの構築・運用、通信機器の開発・販売、通信サービスの提供などを行っています。これには、モバイル通信、固定通信、光ファイバー、無線ネットワークなどが含まれます。
代表的な企業:NTTドコモ・Softbank・KDDI・USEN・NTT東日本・NTT西日本・NTTデータ
—通信インフラ業界のM&A事例—
-2017年8月、KDDI株式会社は株式会社ソラコムの株式を取得し、子会社化しました。国内大手通信キャリアのKDDIが通信プラットフォーム「SORACOM」を運営するソラコムを譲り受けることによって、これまでの導入実績やノウハウなどを相互に共有し、「新たなIoTビジネスの創出」「IoTプラットフォームの構築」「グローバル展開」「次世代ネットワークの開発」などのシナジーを期待しています。