IT事業の拡大戦略

IT業界の「Exit戦略」と「成長戦略」とは

社長の平均年齢

IT業界では、企業が事業を拡大するために、さまざまな戦略を立てています。その中でも、特に注目されるのが 「Exit戦略」と「成長戦略」です。これらの戦略は、どのような意味を持ち、どのようなメリットとデメリット があるのでしょうか。この記事では、IT業界の「Exit戦略」と「成長戦略」について解説します。

IT業界の「Exit戦略」と「成長戦略」のトレンド

IT業界では、近年、「Exit戦略」をとる企業が増えています。特に、スタートアップやベンチャー企業は、自社 の事業や技術を大手企業に買収されることで、高い評価や利益を得ることができます。また、事業を売却するこ とで、リスクや負担を減らすこともできます。一方、「成長戦略」をとる企業も多く存在します。これらの企業 は、自社の事業や技術を独自に発展させることで、市場における優位性やブランド力を高めることを目指して います。また、事業を継続することで、社会的な貢献や使命感を実現することもできます。

「Exit戦略」と「成長戦略」どちらを選ぶべきか

では、「Exit戦略」と「成長戦略」のどちらを選ぶべきかという問題ですが、これには一概に答えることはでき ません。それぞれの企業によって、事業の特性や目的、状況や条件が異なります。したがって、自社にとって最 適な選択肢を見つけるためには、以下のような点を考慮する必要があります。

  • 事業の現状や将来性:自社の事業はどれくらい市場に受け入れられているか?自社の技術はどれくらい競争力があるか?自社の事業はどれくらい成長する可能性があるか?

  • 事業の目的や価値観:自社の事業はどんな意義や価値を持っているか?自社の事業はどんな社会的な影響を与えているか?自社の事業に対する情熱や使命感はどれくらいあるか?

  • 事業のリスクや負担:自社の事業はどれくらいリスクが高いか?自社の事業はどれくらい資金や人材が必要か?自社の事業はどれくらいストレスや責任が大きいか?

  • 事業の評価や利益:自社の事業はどれくらい市場から評価されているか?自社の事業はどれくらい利益を生み出しているか?自社の事業はどれくらい売却価格が高いか?

これらの点を総合的に判断し、自社にとって最も合理的で満足度の高い選択肢を選ぶことが重要です。

Exit戦略とは

社長の平均年齢

ベンチャー企業にとって、Exit戦略は事業の成長と資金調達において重要な要素です。Exit戦略とは、創業者や 投資家が自社の株式を売却して利益を得ることです。Exit戦略には、株式上場(IPO)や事業譲渡(M&A)など があります。IPOは経営権を維持しながら資金調達や知名度向上ができるメリットがありますが、厳しい条件を クリアする必要があります。一方、M&Aは経営権を失うデメリットがありますが、最短かつ高確率でExitできる メリットがあります。

- IPO(株式公開):未上場の企業が株式市場に株式を公開し、一般の投資家から資金を調達することです。

日本では、2022年に新たにグロース市場という新しい市場区分が設けられました。これは、成長性の高いベン チャー企業を支援するためのもので、上場基準が従来よりも緩和されています。グロース市場への上場を目指す 企業は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 株主数:150人以上

  • 流通株式数:1,000単位以上

  • 流通株式時価総額:5億円以上

グロース市場への上場を成功させたベンチャー企業の一例としては、「マネーフォワード」が挙げられます。マ ネーフォワードは、個人向けの家計簿アプリや法人向けのクラウド会計ソフトなどを提供するフィンテック企 業です。2022年9月にグロース市場へ上場しました。上場時の時価総額は約1,000億円でした。マネーフォワードは、IPOを通じて資金調達やブランディングを強化し、事業領域や海外展開を拡大することを目指しています。
IPOはベンチャー企業にとって魅力的なExit戦略ですが、その分難易度も高いものです。

- M&A(譲渡):事業を売却し、創業者利益を受け取ることで既存事業や新事業への投資、またはリタイアをします。

別業態や別業種と提携・合併することで企業のさらなる発展を見込むこともできるため、M&Aは企業のExit戦略だけでなく、成長戦略としても利用されることがあります。

事業再生のための売却
事業再生とは、経営危機に陥った企業が再建するための取り組みです。事業再生には様々な方法があります が、その中の一つが事業譲渡です。事業譲渡とは、自社の事業や資産を他社に売却することです。事業譲渡によ って、企業は債務の返済や資金調達に充てることができます。例えば、2020年には日本航空(JAL)が子会社の JALパック株式会社をH.I.S.株式会社に売却しました。この売却によって、JALは新型コロナウイルス感染症の 影響で打撃を受けた航空事業の立て直しに注力することができました。

提携戦略としての合併
合併とは、2つ以上の企業が1つになることです。合併によって、企業は自社の弱みを補完したり、シナジー効果 を生み出したりすることができます。しかし、合併は企業文化や経営方針などの調整が難しい場合もあります。 そこで、合併ではなく提携戦略としてM&Aを行うこともあります。提携戦略としてのM&Aでは、経営権や株式 比率などを調整しながら相互に協力する関係を築きます。例えば、2021年には日本最大級のオンラインショッ ピングモール「楽天市場」を運営する楽天株式会社と日本最大級のオンライン書店「honto」を運営する株式会社文教堂グループホールディングス(BKH)が提携しました。この提携によって、両社は自社の強みを活かしながら、「honto」内で「楽天市場」へのリンクや「楽天ポイント」への交換などを実現しました。

M&Aは企業にとって多くのメリットをもたらす可能性があります。しかし、M&Aは成功させるためには多くの 準備や交渉が必要です。そのため、M&Aに関する専門的な知識や経験を持つアドバイザーに相談することがおすすめです。

M&AやIPOを使ったExit戦略のメリットは、以下のような点が挙げられます。

  • 企業の知名度や信用度が向上し、事業拡大や人材確保に有利になる。

  • 上場後も経営権を保持したまま、株式市場から追加の資金調達ができる。

  • 投資家や創業者にとっては、高額な利益を得ることができます。

  • 事業や技術を引き継ぐ企業にとっては、競争力やイノベーション力を高めることができます。

  • IT業界全体にとっては、新たな動きやチャレンジが生まれることで、活性化することができます。

一方で、Exit戦略のデメリットは、以下のような点が挙げられます。

  • M&Aでは、売却先の企業との文化や方針の違いによって、事業や技術の価値が低下したり、人材流出が起きたりするリスクがあります。

  • IPOでは、上場には厳しい審査や準備が必要であり、多くの時間や費用がかかる、上場後は株主や社会に対して透明性や責任が求められる、株価は市場の需給や業績によって変動するため、安定した収益を得ることができないなどが挙げられます。

Exit戦略の具体例

Exit戦略を実行したIT企業の具体例を紹介します。

M&Aの具体例
- 2021年9月には、Webサービス開発会社であるエッグが駅探に買収されました。エッグはふるさと納税システムやフレイル早期発見システムなど地方自治体向けサービスを提供しており、駅探はこれらのサービスを自社 ポートフォリオに加えることで多角化を図りました。
- 2021年2月には、システム開発会社であるビーイングがトゥルースに買収されました。ビーイングは土木積算 ソフトウェアを提供しており、トゥルースはMBO(マネジメント・バイアウト)によってビーイングを非公開化しました。これによりビーイングは中長期的な事業構造変革に取り組むことが可能になりました。

IPOの具体例
- 2021年10月には、AI(人工知能)技術開発会社であるABEJAが東証マザーズ市場へ上場しました。ABEJAはAIプラットフォーム「ABEJA Platform」やAIソリューション「ABEJA Insight」などを提供しており、上場資金を事業拡大や海外展開などに活用する予定です。
- 2021年7月には、Webサービス開発会社であるBASEが東証マザーズ市場へ上場しました。BASEはECサイト構築サービス「BASE」や決済サービス「PAY.JP」などを提供しており、上場資金を新規事業開発や人材採用などに活用する予定です。

Exit戦略について説明しました。
自社の事業内容や目標に合わせて、最適なExit戦略を選択することが重要です。

成長戦略とは

社長の平均年齢

成長戦略とは、自社の事業や技術をさらに発展させるための戦略のことです。主に、以下の2つの方法があります。

  • オーガニック成長(社内資源で成長)

  • インオーガニック成長(他社の買収・提携で成長)

- オーガニック成長:IT業界では、買収や合併などの外部的な成長手段に頼らず、自社の内部資源や能力を活用 して成長するオーガニック成長という戦略が注目されています。オーガニック成長は、自社の強みや特色を生 かして、顧客満足度やブランド力を高めることで、市場シェアや収益を拡大することを目指します。オーガニック成長には、以下のような具体的な方法があります。

  • 新製品や新サービスの開発・提供

  • 既存製品や既存サービスの改善・拡充

  • 新規市場や新規顧客層の開拓

  • 既存市場や既存顧客層の深耕

  • マーケティングや販売チャネルの強化

  • イノベーションやデジタル変革の推進

  • 人材育成や組織文化の改革

オーガニック成長は、自社のビジョンやミッションに沿って、持続的かつ安定的な成長を目指す戦略です。IT業界では、技術革新や市場変化が激しいため、オーガニック成長に取り組む企業は、常に顧客ニーズや競合動向に対応し、自社の価値提案や差別化要因を明確にする必要があります。オーガニック成長は、単なる数字追求 ではなく、顧客価値や社会貢献を重視することで、長期的な信頼関係やブランドイメージを築くことができます。

- インオーガニック成長:IT業界では、自社の技術やサービスを開発するオーガニック成長だけでなく、他社の買収(M&A)や提携を通じて事業を拡大するインオーガニック成長も重要な戦略となっています。

インオーガニック成長には、以下のようなメリットがあります。

  • 新たな市場や顧客層にアクセスできる

  • 競合他社との差別化や優位性を高める

  • 技術や人材、ノウハウを獲得できる

  • シナジー効果やコスト削減を実現できる

以上のように、IT業界ではインオーガニック成長が活発に行われており、多様な事業領域において競争力を高めています。しかし、インオーガニック成長には、以下のようなデメリットやリスクも存在します。

  • 買収価格が高騰する

  • 買収後の統合や運営に課題が生じる

  • 規制当局や反トラスト法による審査や制裁を受ける

  • 企業文化や倫理観の相違による摩擦が起こる

IT業界の成長戦略としてのインオーガニック成長は、オーガニック成長とバランスよく行うことが重要です。また、インオーガニック成長を行う際には、買収対象の選定や評価、交渉や契約、統合や運営などのプロセスを慎重に進めることが必要です。

成長戦略を実行したIT企業の具体例を紹介します。

オーガニック成長の具体例
- アマゾン: オンライン小売業からクラウドコンピューティングや音声アシスタントなどの新分野に進出し、多様な製品やサービスを提供することで、世界最大のIT企業に成長しました。
- マイクロソフト: WindowsやOfficeなどの既存製品を改善し、クラウドコンピューティングや人工知能などの新分野にも積極的に投資し、イノベーションやデジタル変革をリードすることで、高い収益性と競争力を維持しました。
- メルカリ: 日本最大のフリマアプリとして確固たる地位を築き、海外市場にも進出し、新たなサービスや機能を開発することで、ユーザー数や取引額を増加させました。

オーガニック成長の具体例
- マイクロソフトがLinkedInを買収したことで、ビジネス向けのソーシャルネットワークやオンライン教育の分野に進出しました。
- グーグルがFitbitを買収したことで、ウェアラブルデバイスやヘルスケアの分野に強化しました。
- アマゾンがWhole Foods Marketを買収したことで、オーガニック食品や実店舗の分野に展開しました。
- アップルがShazamを買収したことで、音楽認識や音楽配信の分野に優位性を高めました。
- フェイスブックがInstagramやWhatsAppを買収したことで、写真や動画の共有やメッセージングの分野に支配力を持ちました。

まとめ

IT業界では、「Exit戦略」と「成長戦略」が注目されています。これらはそれぞれメリットとデメリットがあります。企業は自社の事業や技術の特徴や目標に応じて、最適な戦略を選択・実行していく必要があります。